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1.プロローグ

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1.プロローグ

 記憶の中でキラキラと神秘的に輝いていた森は、まるで沼の底のように暗かった。
 花の香り。鳥のさえずり。そよ風が揺らす、心地よい木々の葉音。目を瞑れば、ありありと思い出すことができる。 
 しかし、今は血なまぐさい鉄の臭いと、まるで地獄から聞こえてくるようなうめき声が響いている。
 横たわる地面はとても硬くて冷たい。矢で射られた肩と剣で切られた背中が焼けるように痛くて、意識が遠ざかりそうになる。
――死ぬのかな……。
 不思議と恐怖心は湧かなかった。
 ただ、他人の私利私欲のために、自分がこんな目に遭わなければいけないことが悔しかった。
 がさりと草木をかき分ける音がして瞼を開けた。もう指一本も動かせない。
 瞼が開いたことすら、奇跡と思えた。
 霞む視界の先にいたのは、青白い一本角の馬。
 ――ユニコーンだ。
 辺りは暗いのに、毛並みが艶々と濡れたように輝いている。
 僕の愛馬よりも一回りは大きいだろうか。体は無駄のない引き締まった筋肉で覆われ、とても美しい。
 流れるように動く白銀のたてがみに見とれていると、ユニコーンがこちらを向いてゆっくりと近づいてくる。
まるで、僕がまだ生きているか確かめようとしているみたいだ。

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