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第一章 必ず勝てる賭け

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第一章 必ず勝てる賭け

「アルベルト皇帝かダビデ提督か、どっちが早く子供ができるか賭けるってんなら、俺は断然ダビデだな」

 公共の大浴場で熱い湯に浸かり、一日の労働の汗と疲れを洗い落したサリオンは、この国の人々が入浴帰りに立ち寄る歓楽街にも足を向けた。

 サリオンのような最下層階級のΩ《オメガ》や、中層階級β《ベータ》の中でも貧困層向けの酒場や商店が雑多に並ぶ貧民窟だ。
 深夜にも関わらず、どの店も路地にまで出したベンチやテーブル席まで埋まるほどの賑わいを見せている。
 中でもサリオンは、貝の蒸し煮と塩漬けイワシが特に旨い裏通りの立ち呑み屋を贔屓(ひいき)にしていた。

 表通りに面した店は二十代から三十代の血気盛んな男達が群れている。
 比較的立地の良い酒場で料理や酒を運ぶΩの若い男は大抵、男娼も兼ねている。βの客との交渉次第で、店の二階の別室に移り、食事以外の『奉仕』も提供する。

 そんな店に十代半ばの、しかもかつては娼館で、『昼三(ちゅうさん)』と称される最高位の男娼だった容姿の自分が一人で行けば、酒に酔った野獣のような男達を無駄に刺激しかねない。
 
 その点、サリオンが通い始めた立ち呑み屋の接客は、サリオンの祖父の年に近いようなΩ達が務めている。そちらの『サービス』目的で通う男は、まずいない。
 客層も年を取ったΩが多い。
 彼等は突然ふらりと現れ、通い始めたサリオンを快く受け入れて、孫にでも接するように気さくに話しかけてきた。

「俺ならダビデ提督に金貨十枚賭けてもいい。っていっても、そんな大金。もともと持ってやしねえけど」
 サリオンは水で割ったワインの入ったグラスを口元に当て、艶然と微笑んだ。

「どうしてそこまで言い切れる? アルベルト皇帝もダビデ提督も、三十代の男盛りだ。皇帝は隣国への遠征軍にも必ず同行されてるし、戦闘中は親衛隊に護られて、司令塔になってりゃいいのに、最前線の騎馬隊で剣を奮うこともある。ダビデ提督も皇帝の従弟で王族だが、男気があって見た目の良さでは、皇帝の方が(まさ)っている」

 サリオンと一緒に腰高の円卓を囲んでいた五十代半ばの男が声高に反論した。その横にいる別の男も深く頷き、その弁を援護する。

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