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第1話

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「こっちだよ、智」
 
ようやく雪も融け始めた、3月の中ごろ。
今年で高校3年生になる水橋 智(みずはし さとる)は、友人である今中 始
(いまなか はじめ)に連れられ、今中家の薄暗い蔵を突き進んでいた。
余程長い間整理されていなかったのか。歩くたびに埃が宙を舞う。
 
「なんだよ、面白い物って」

「ちょっと待って・・・あった。これだよ」
 
始が指したその先には、人形があった。
150cmくらいの大きさだろうか。座ったままそこに置かれていたので、正確な大きさはわからなかったが、恐らくそのくらいであろう。
 
「大きいな。もう少し、近づいて見てもいいか?」
 
「うん、いいよ」
 
持ってきた懐中電灯でソレを照らして、もう少し近づいてみた。
ギラリ。懐中電灯の灯りを、何かが鈍く反射した。
歯・・・だろうか。口と見られるその中から、あまりにも大きく、鋭い歯がこちらにちらつかせていた。
その口は耳元まで裂けていて、肉食動物のような獰猛さをこちらに匂わせている。
 
「触っても良いか?」
 
「もちろん」
 
始の承諾を得て、おそるおそるソレに手を触れてみる。
埃を軽く払ったその先には、まるで人の肌のような少し柔らかい弾力があった。
顔は球体に近く、目蓋は閉じている。耳らしきものはなく、ただ、顔の横に小さな穴があるだけ。
人形と呼ぶには、あまりにも粗末な顔の作りであった。
 
次は体を見てみる。
子供のように小さく華奢な姿であった。
服装は、緑のTシャツと短パンらしきものを着ていた。
そして、嫌でも目に付いたのが・・・
 
「斧・・・?」
 
思わず呟いてしまうほど、そこには不釣合いなものであった。
小さな手に握られていたその斧には、赤黒い染みやサビが見受けられたから。

その染みやサビの原因が血であるのならば、この斧が振るわれた対象は、木などではなく、生き物、またはその死体であることは容易に想像できた。

「智?」

始に声をかけられ、ネガティブな思考からいつもの健全な思考に戻った。
そうだ。あるわけが無いのだ。この人形が一人でに動きだし、誰かを殺傷したとでも言うのか。あまりにも非現実的である、と彼は判断した。

「始。これは一体なんなんだ?」

と、悟はストレートに始に疑問を投げ掛けた。だが、始はそれに首を傾げる。

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