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はじまりの唄

表紙提供 ももごろん☆さま

素敵な表紙をありがとうございます!

 開け放った窓から、ざわざわと通りの喧騒が聞こえる。

 ……さむっ。

 窓を閉めて寝れば良かった。だが昨夜は妙に寝苦しかったのだ。

 さみーわ、うるせぇわ…。

 耳を塞ぎたくて枕に顔を埋める。まだ目を開けるのが、勿体無い気がした。


 いつものことだが昨夜もうまく眠れずに、薄っぺらい布団の上で大の字になってしばらく天井のシミを見つめていた。俺が小さな頃から見つめて来たそれは、昔のように他の何かに形を変えたりしない。シミは、シミだ。

 つまんねーな、大人って。

 酷く物悲しい気分にさせられて、身体を起こした。それで窓を開けることにしたのだ。生温い空気を入れ替えて、鬱々とした気分も捨ててしまいたかった。そのまま窓枠にもたれて、ぼんやりと見慣れた景色を眺める。

 明日は祝日だ。天気予報も悪くは無かったし、朝になれば今は静かなこの参道も、大勢の観光客でごった返すに違いない。

 あー、面倒くせー。

 だが、仕事をしないと生きてはいけないのだから、働くべきなのは理解している。いつまでも夢だなんだと言っていられないのだ。
やり甲斐を見出せなくても、とりあえず働く。例えこの仕事が、日がな一日ぼんやりと店先に座っているだけの、置物と変わらないような仕事でも。

「……ふぁ……寝るか」

 いい加減布団を干そうと考えながら、また横になった。その後の記憶がないから、きっと今度は眠れたんだろう。眠りにつくまでが大変なのだ。はっきり言ってあの暇で死にそうな仕事よりも骨の折れる仕事だと思う。

 今夜も眠ることが出来て、ホッとした。

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