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第零章 天国と地獄

目次
第零章 天国と地獄
第一章 刑務所への招待
第二章 出発
第三章 各部屋の風景
第四章 第一の殺人~始まりは密室から
第五章 第二の殺人~ありがちな毒殺
第六章 第三の殺人~完全不可能犯罪
第七章 第四の殺人~忘れちゃいけないダイイングメッセージ
第八章 犯人の死
第九章 一つの解決
第十章 探偵小説
第十一章 真相

主要登場人物
A大推理小説部メンバー

沢木 一平
(さわき いっぺい)
会長・二十二歳・法学部四回生

遠藤 孝司
(えんどう たかし)
副会長・二十二歳・医学部四回生

大下 道家
(おおした みちいえ)
作家・二十三歳・文学部四回生

杉本 和彦
(すぎもと かずひこ)
作家・二十二歳・理学部四回生

西涼 孝明
(せいりょう たかあき)
作家・二十二歳・理学部四回生

有田 信志
(ありた のぶし)
作家・二十歳・商学部二回生

伸 龍太
(しん りゅうた)
作家・十九歳・商学部二回生

遠藤 知可子
(えんどう ちかこ)
編集者・十九歳・経済学部一回生

鳥居 優
(とりい ゆう)
作家・十九歳・文学部一回生

中村 紀子
(なかむら のりこ)
作家・十九歳・医学部一回生

名奈志 香織
(ななし かおり)
作家・十九歳・経済学部一回生

遠藤 美津子
(えんどう みつこ)
作家・故人・享年二十・本来なら現在文学部三回生

犯人
上記メンバーの一人。美津子と愛し合っていた。

ある人物
K大文学部四回生。事件に巻き込まれる。

      1

 暗い部屋。男と女が二人でベッドに横たわっていた。

 午後十時半。

 二人とも起きてはいるが、もうお互いに十分間ほど、表通りを走る車の音しか聞いてはいない。

 「ねえ。死後の世界って在ると思う? 天国と地獄って在ると思う?」

 女が突然男に訊ねた。瞬間、男の顔に翳りが見えた。

 「お前はどう思ってるんだ?」

 しかし男は、普段と変わらない口調で訊ね返す。

 「絶対に在る。ううん。在って欲しい」

 女は笑顔で応える。

 「どうして?」

 男はそんな女の笑顔を眩しく思いながらも、更に訊ねる。

 「だって、死後の世界が無ければ死んだら終わりになっちゃうでしょ。そんなの寂しいじゃない。それに……」

 「それに?」

 「私は悪いことをしたことがないから、死後の世界が在ったら絶対に天国へ行けるもの」

 女はそう言うと心から楽しそうに笑った。

 普段の男であったならここで「お前は間違いなく地獄行きだよ」と言うところだが、今日の男はとてもそんなことを言う気分にはなれなかった。

 「そうだね」

 男は少し寂し気にそう応えた。悪いことをしたことがないか……。

 また暫く沈黙が続く。

 「ちょっと、私の質問に応えてよ」

 今度も女の方が沈黙を破った。

 「ん? ああ」

 「死後の世界って在ると思う?」

 もう一度、女は質問を繰り返す。

 この時、男は女が余命幾許もないことを知っていた。

 女は癌を患っていた。しかも病状は極めて悪く、手術をしても助かる見込みはなかった。結局、様々な紆余曲折があったものの、家族や本人の意志により病院側の反対を押し切って、入院するよりも残りの人生を楽しむという決断が下されていた。

 そんな彼女が死後の世界は在るか? と訊く。天国は在るか? と訊く。しかも、男にとって最も大切な女性である彼女が……。

 女の質問に対する男の回答は、NO。しかし、どうして本当のことが言えようか? 男は生まれて初めて嘘を吐いた。他人にではなく、自分に。

 「俺もお前と同じ考えだ。死後の世界は在って欲しい。いや、必ず在る」

 男は女の帰った後、激しく泣いた。

 その次の日、女は天に召された。

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